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映画『ペンギン・ハイウェイ』をレビュー「少年とお姉さんの“選択”の物語」ネタバレあり

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ボーイ・ミーツ・世界の謎。少年とお姉さんの“選択”の物語

管理人は今夏、主だったアニメ映画はすべて鑑賞しましたが、その中ではアタマひとつ抜けて楽しめました。本当に面白かったです。短い映像作品というのは、往々にして途中で着地点の予想が立ってしまいがちですが、この作品は最後まで展開が読めません。こんなにドキドキしながら映画を見たのは久しぶりかもしれません。また集中力の低い管理人としては珍しく、途中でふっと我に帰ることなく物語に集中できました。その理由として、

・物語自体の前へと進む力がパワフルで、その推進力にアタマからオシリまで引っ張られたこと。原作付きでありながら、短い時間で綺麗にまとまっていました。

・アニメ映画ではあるあるですが、「声とキャラクターの違和感」がなかったこと。みなさんハマっていました。

が良かったのかなと個人的には感じました。特にファンタジー映画は、どこまで世界観に没入できるかが、楽しめるか否かの鍵になってくると思います。

世界観の下地は現代ですが、まな板の上にファンタジーがどかっと乗っかっている映画です。監督は石田祐康。原作は森見登美彦。

あらすじ

この世界について日々熱心に学び続けるアオヤマ君は、小学4年生でありながらたいへん賢く大人びている。彼が学ぶのは学校の勉強だけにとどまらない。文字どおり「世界」、つまりアオヤマ君が実際に関わる周囲の事象について独自に研究を重ね、つぶさにノートにまとめている。その対象は多岐に渡るが、最近は専ら歯科医院のお姉さんに興味を惹かれている。

ある日、彼の住むなんの変哲もない街に、突如としてペンギンが姿を現す。ペンギンは複数目撃され、さらに驚くべきことに突如として消えてしまう。なぜ南極周辺にしか生息していないはずのペンギンが存在したのか? そしてなぜ消えたのか?

常識的な科学では到底太刀打ちできないような現実離れしたこの問題に立ち向かうなかで、アオヤマ君はお姉さんとペンギンに関係があるらしいことを知る。そこには想像をはるかに超えた秘密が隠されているのであった。

小さな町でのペンギンの目撃情報からはじまる物語は、歯科医院のお姉さん、ひいては街全体を巻き込んだ大きなうねりとなる。

街に現れたペンギンの正体は? 果たしてアオヤマ君は問題を解決できるのか?

主なキャスト

みなさん、すごいハマってました。主題歌は宇多田ヒカルの「Good Night」。

・アオヤマ君:北香那

・お姉さん:蒼井優

・ウチダ君:釘宮理恵

・ハマモトさん:潘めぐみ

・スズキ君:福井美樹

・アオヤマ君のお母さん:能登麻美子

・アオヤマ君の妹:久野美咲

・アオヤマ君のお父さん:西島秀俊

・ハマモトさんのお父さん:竹中直人

※以下、ネタバレあり

雑感

おっぱいは正義

アオヤマ君はおっぱいが大好きで、お姉さんのおっぱいについても研究に余念がありません。また、おっぱいのことを考えると優しい気持ちになれます。

万人向けのアニメ映画では描かれることの少ないと思われる、少年時代の性に対する興味を爽やかに描いている点は非常に好感が持てました。ちゃんと、というか、結構尺を割いて描いてくれてありがとうございます監督。大人びたアオヤマ君の可愛らしい一面を見せるこれ以上ないスパイスになっていると思います。

子どもの頃はこうだった

子供の頃、こうだったなあ、こういうことを思っていたなあ、という描写が印象的でした。例えばアオヤマ君は抜けそうな乳歯を度々いじっています。すっかり忘れていましたが、確かに子供の頃は抜けそうな歯をしきりに舌や指で気にしてました。後述の死に対する恐怖も同様です。

アオヤマ君のお姉さんへの気持ち

そもそもアオヤマ君はお姉さんと結婚する気まんまんですが、アオヤマ君のお姉さんへの気持ちを語る上で重要なエピソードがあります。

ある日、アオヤマ君はお姉さんの家でお昼を御馳走になりますが、お姉さんが眠ってしまいます。お姉さんの寝顔は、アオヤマ君には完璧なものに映り、なぜこのような形に出来上がったのだろうと不思議に思います。そしてお姉さんの顔を見ていると自然と嬉しい気持ちになることに気付きます。アオヤマ君はハマモトさんの件など恋愛には疎い描写がありますが(小4ならこんなものでしょうか)、素直で心にくる感情表現です。これはやっぱり愛でしょう。年齢を重ねるにつれて人付き合いとか恋愛にはごちゃごちゃしたファクターが纏わり付いてきますが、本質は相対的なものじゃなくて絶対的なものなんでしょう。

アオヤマ君にとってお姉さんが、かけがえのない特別な人であることがわかります。

この世に生まれることと、いつかは死んでしまうこと

とある日、アオヤマ君がベッドで横になっていると、妹が泣きながらこう言ってきます。「お母さんが死んじゃう」-。当然アオヤマ君は母親に何かあったのかと驚きますが、よくよく話を聞けば、今にも死んでしまいそうであるという意味ではないことがわかります。妹は、いつかはお母さんが死んでしまうということに気付き、漠然とした、そして大きな恐怖に居ても立っても居られなくなってしまったのです。この「死に対する漠然とした恐怖」を覚るという体験は、誰しも子ども時代に一度は経験したことだと思います。そして鮮烈な印象を残しているはずです。死は誰にでも訪れるものですが、この世界から自分が消えてしまうというのは、世界が終わることと等しい恐怖です。そして表裏一体で「では、なぜ生まれてきたのか」と考えることになります。

この「生まれることと、死んでしまうこと」「なぜ生まれてきたのか」ということが、本作を支える大きな軸となっていると感じました。

少年とお姉さんの選択

ペンギンの目撃談に端を発した一連の事件は、やがて街全体を巻き込んだ大きな問題へと発展していきます。

最終的にアオヤマ君とお姉さんは、お姉さんが人間ではなく、この世界の住人でもないことを考え至ります。アオヤマ君は、お姉さんが人間ではないということを仮説として理論付ける一方、心では認めることはできません。お姉さんも自分のこれまでの人生は何者かに作られたものなのか、なぜ生まれてきたのかと悩みます。

そして、問題を解決した場合、お姉さんはこの世界から消えてしまうであろうことを二人は予想します。

それでも二人の選択には迷いがありませんでした。

 

特別な人が消えてしまうという恐怖と、自分が消えてしまう恐怖。

なぜ心から特別と思える人がこの世に存在するのかという疑問と、なぜ自分が生まれてきたのかという疑問。

感情が複雑に入り混じるなかで、二人の選択に迷いがなかったのはなぜでしょうか。

お姉さんは言いました。「私を見つけて会いにおいでよ」

アオヤマ君は、いつか必ずお姉さんに会いに行くでしょう。ペンギン・ハイウェイを辿って。

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

ペンギン・ハイウェイ 完全設定資料集

 

ペンギン・ハイウェイ 公式読本

 

「ペンギン・ハイウェイ」オリジナル・サウンドトラック

 

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