単純な構造のデバイスと思われがちなキーボードですが、実は沼のごとく奥が深く、製品によって性能や操作性が大きく異なります。PC周りの環境だと、体に近い機器ほどお金をかけた方が快適になるとよく言われますね。安いものでは1000円ほど、高いもので数万円と価格帯もさまざまです。
今回は、そんな重要なPC周辺機器であるキーボードについてまとめてみます。
選ぶ観点
- 有線タイプか無線タイプか
- 日本語配列か英語配列か
- キータッチの種類
有線タイプと無線(ワイヤレス)タイプ
親機(PCやスマホ、タブレットなど)との接続方法によって、有線タイプとワイヤレスタイプに分けられます。
有線キーボード
その名の通りケーブルで物理的に親機と接続します。接続設定が簡単であるため、自作PCの立ち上げ時などに1台持っておくと便利です。給電はケーブル経由で行います。
ワイヤレスキーボード
ケーブルなしで親機との接続が可能なタイプです。給電方法は電池を用いるタイプと充電式のタイプがあります。
USBレシーバー接続
親機に専用のレシーバーを取り付けることで接続する方式です。レシーバーはキーボードに付属されています。
Bluetooth接続
親機(PC、スマホなど)と子機(キーボード)双方が対応していれば接続(ペアリング)できます。なお、Bluetoothの通信距離には、「Class」という分類があります。「Class」は電波強度によってレベル1~3に分けられており、それぞれの電波有効範囲はClass1が約100m、Class2が約10m、Class3が約1mになります。親機と子機でレベルが違う場合は、レベルが低い方のClassが適用されます。
マルチペアリング
マルチペアリング対応機器は、複数のBluetooth機器とのペアリング設定を記憶可能です。最大記憶数は製品ごとに異なります。注意点としては、あくまで通信そのものは親機と子機の1:1で行われるのであって、同時に複数のBluetooth機器とペアリングできるわけではありません。
デバイス切り替え機能
接続先の親機をワンタッチで切り替えることを可能とした機能です。
英語配列と日本語配列
日本語(JIS)配列の特徴
ホームポジションが若干左寄りになります。
キートップにカナの表記があるものとないものがあります、
英語(ASCII、US)配列の特徴
日本語配列と基本的な配置は変わりませんが、記号の配置が大きく異なります。英語配列はプログラミングの際などに利便性が高いようです。
ホームポジションが中央に近いためより自然な体勢でタイピングできます。
Spaceキーが日本語配列に比べて横に長くなっています。
Enterキーが横長の長方形となっているため、日本語配列と比べると中央寄りになっています。
全角/半角キーがありません。切り替えはAlt + ~で行います。また、変換、無変換、カタカナ ひらがなキーもありません。
キースイッチのタイプ
主にメンブレン、パンタグラフ、メカニカル、静電容量無接点の4種類に分けられます。
メンブレンスイッチ
多くのキーボードに採用されているメジャーなスイッチです。「メンブレン」とは薄い膜(シート)のことです。接点と導線のシートを物理的に接触させて入力を認識させます。
入力の仕組み
- キーを押す
- キー内部のラバーカップが潰れつつ押し下げられる
- 接点と導線のシートが接触する
- 接触によってキーの入力を認識する
- ラバーカップの反発力でキーが戻る
このステップ中で登場するラバーカップはゴム製のお椀を逆さにしたような形のパーツで、ゴムの反発力を利用してキーが戻る仕組みになっています。キーを押し下げる際もラバーカップの反発力が働きますが、ゴム製なので反発にムラが出ます。キーを支持するためにキー自体にガイドが備えられており、そのぶん厚みが出ます。
良いところ
構造が単純で比較的安価
微妙なところ
反発力が強めなので長時間の使用に向かない
キーの中央部以外を押すと反応が鈍くなる
パンタグラフスイッチ
ノートパソコンや薄型キーボードで多く採用されるスイッチです。メンブレンと同様の仕組みで入力を認識します。
入力の仕組み
- キーを押す
- キー内部のラバーカップが潰れつつ押し下げられる
- 接点と導線のシートが接触する
- 接触によってキーの入力を認識する
- ラバーカップの反発力でキーが戻る
メンブレンとの違いは、その名の通り「パンタグラフ」というパーツを使っている点にあります。パンタグラフは「X」型のキー支持機構で、メンブレンのようにキーを支持するためのガイドを必要とせず薄型化が可能です。同時に、キーを押し下げる距離が物理的に短くなるためキーストロークが軽くなります。メンブレンと比較するとラバーカップが薄いため反発力は弱く、結果打ち心地は軽くなります。
良いところ
構造が単純で比較的安価
パンタグラフ機構によって力が均等に加わるため、キーの中央部以外を押しても反応する
キーストロークが短く、キータッチも軽いため長時間使用しても疲れにくい
4タイプの中で最も静音性が高い
微妙なところ
キーが薄型であるということがパンタグラフの大きなメリットですが、逆にキー同士の区別がつきづらくミスタッチの要因になります。対策として、MacBookなどではキー同士をセパレートしています。
メカニカルスイッチ
キーひとつひとつに機械式のスイッチとスプリングを備えています。
入力の仕組み
- キーを押す
- キー内部の機械式スイッチが接点に接触する
- 接触によってキーの入力を認識する
- スプリングの反発力でキーが戻る
スプリングを採用していることにより、キーの押し下げと戻りがラバーカップよりも滑らかで、耐久性も高くなっています。タイプ音も様々で、「カチカチ」という独特の打鍵音を持つものや静音製に優れたものなど幅広いです。キーボード界隈でよく耳にする「赤軸」「青軸」というのはメカニカルスイッチに置ける「Cherry」ブランドの分類です。
良いところ
底打ち感がしっかりある
打ち心地の選択肢が幅広い
スプリングを用いているのでキータッチが滑らかで長時間使用しても疲れにくく、かつ耐久性が高く長期間使用できる
微妙なところ
キーひとつひとつにスイッチを組み込むため、部品が多く製造に手間がかかり高価となる
静電容量無接点方式スイッチ
静電容量の変化を感知して入力が認識されるスイッチです。物理的な接触がないためスイッチの摩耗がなく、半永久的に使用できます。同時に接点がないため打鍵音も小さくなります。
入力の仕組み
- キーを押す
- キー内部のスプリング付きラバーカップが変形してカップ内の静電容量が変化する
- 静電容量の変化を感知してキーの入力を認識する
- スプリングとラバーカップの反発力でキーが戻る
良いところ
耐久性が高く半永久的に使用できる
パンタグラフに次いで静音性が高い
4タイプの中でキータッチが最も滑らかで長時間使用しても疲れにくくプロのオペレーターにも使用される
微妙なところ
構造が複雑で高価
有名どころ
東プレの「REALFORCE」シリーズとPFUの「Happy Hacking Keyboard」シリーズがメジャーというか、静電容量無接点方式といえばこの2シリーズですね。メジャーではないですがLEOPOLDというメーカーも展開しているみたいです。